ヤマキン、強力な接着材開発
2020年07月17日
歯のかぶせ物 ピタッと!
歯科材料のYAMAKIN(ヤマキン、大阪市)は高知県香南市の拠点で、虫歯治療に用いる樹脂製のかぶせ物を患部に簡単装着できる強力な接着材を開発、6月から全国の医療機器卸売店に販売を始めた。高知工科大学が開発した新物質を原料に接着力を高めた。かぶせ物が外れたり、ずれたりしないように患者の負担を和らげる。
歯科接着材「KZRーCADマリモセメントLC」は工業用の瞬間接着材に匹敵する接着力という。2020年内に海外でも販売する計画で、24年に国内外合計の出荷額1億5千万円を目指す。
かぶせ物は合金、セラミック樹脂、樹脂の3種類あり、普及している樹脂製向けに使う。歯科医師が接着材をかぶせ物の内部に塗り、患部に装着。術後に外れたりずれたりするリスクを軽減した。「かぶせ物の微妙なずれは他の歯に負担をかけ、かみ合わせがうまくいかず歯痛を引き起こす」(同社)
装着後の硬化も早い。かぶせ物に青色の発光ダイオード(LED)を20秒ほど照射して固める。従来は固まるのを待つ必要があったり、接着材がかぶせ物からはみ出したりすることがある。
新たな接着材は3~5秒の光照射で適度な固さになり、容易に取り除くことができる。
高知工科大が開発した「マリモ」という多孔質ナノ粒子を接着材の原料に応用した。吸着効果が飛躍的に高まり、人体にも安全。顕微鏡で見ると、球状の粒子がマリモに似ている。
ヤマキンは1991年に高知県香南市で工場を稼働させて以来、同市内に3工場と総合研究所を整備。高知大学や高知県とも連携して歯科材料を開発してきた。地方の歯科医師や歯科技工士の高齢化や人手不足を踏まえ、今後も治療する側の負担を軽減する歯科材料を開発する。(高知支局長保田井建)
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