割れたコメ、歯ブラシに
2020年07月21日
山陽物産「脱プラ」促進
ホテル向けのアメニティーグッズを製造・販売する山陽物産(愛媛県松前町)は、粒が割れるなどして食用に適さなくなったコメを活用した歯ブラシなどの本格販売を始めた。非食用米を35%配合した「バイオマスプラスチック」を使うことで、石油由来のプラ使用量を半減させた。製造コストは従来とほぼ同水準に抑え、環境意識の高いホテルや旅館に販売する。
商品は、コメ由来バイオマスプラスチック製造のバイオマスレジン南魚沼(新潟県南魚沼市)と協力して開発した。精米時などに砕けた砕米や古米を35%配合した原料を、歯ブラシの手部分に使用している。
コメの原料コストは通常プラスチックの3倍かかるが、持ち手中央部分を空洞化する工夫でコストを抑え、約3割の軽量化も実現した。1本あたりの販売価格を従来製品とほぼ同水準の約15円に抑えた。
同じく、コメ由来バイオマスプラスチックを使用したヘアブラシも開発した。
日本有機資源協会のバイオマスマークを取得し、「バイオマスシリーズ」として販売を開始。
同シリーズの商品は焼却時に排出する二酸化炭素(C02)を相殺する
「カーボンオフセット」が認められている。脱プラに加え、「コメの廃棄費用削減などにもつながる」と武内英治社長は話す。
山陽物産は、山陽刷子(愛媛県伊予市)などとSANYOグループ(同)をつくり、アメニティーグッズの歯ブラシで高い国内シェアを誇る。
商品の企画から成形、ブラシの植毛、歯磨き粉の製造、包装まで一貫して手掛け、2019年9月期の連結売上高は約35億円。21年9月期は、シリーズ売上高1億円を目指す。
3月には約8億円を投じ、本社・物流機能を備えた工場を伊予市内に新設した。植毛や包装のラインを導入し、既存工場と合わせた生産能力を2割増強した。
新型コロナウイルスの感染拡大による観光や出張自粛の影響で、足元ではアメニティー需要が激減し、同工場も本格稼働できていない状態だ。
ただ、21年に延期された東京五輪・パラリンピックなど将来的な需要回復も期待されることから、増産に対応できる体制を整えた。
年間約8500万本の歯ブラシを生産するが、今後1割程度をバイオマスに置き換える方針。
取引先のうち、1~2割程度が同シリーズに興味を示している。
建物の運用段階のエネルギー消費量を限りなくゼロにする「ZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)」の認証を受けた道後温泉の「ホテル古湧園 遥(はるか)」など、環境意識の高い複数のホテルが導入を決めたという。
(松山支局 裏田将吾)
食用にできなくなったお米使って歯ブラシを作るという発想、
プラスチックのゴミを減らしていこうという時代にマッチした素晴らしい働きですね。(´▽`)
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