ビッグデータで歯磨き粉開発
2020年09月03日
ワールドF、成分素早く探索
システム開発のワールドフユージョン(東京・中央)は、ビッグデータを活用して有効成分を短期間で割り出すことに成功した。同社は関連ソフトを外販しており、微生物やウイルスに作用する化合物を
探し出せる機能を加えて受注拡大につなげたい考えだ。今後1年で約10社、1億円の売り上げ増を目指す。ソフトは2019年から販売している「LSKB」。創薬候補となる化合物を効率良く探せるのが特長だ。今回は、歯周病に関連する微生物を減らす作用などを持つ候補物質の精油を使い、歯磨き粉として販売する。通常、有効な候補成分の探索には論文と実験データをもとに半年から1年かかるという。
「創薬データベースを使うことで実験することなく候補成分を予測し、2週間ほどで候補物質を探し当てた」と川原弘三社長は説明する。
歯磨き粉は、医薬部外品などを扱う日本ゼトック(東京・新宿)が製品化。9月からワールドフュージョンが歯科卸を通じて販売する。1本3000円前後を見込む。
当面は「化粧品」として販売し、今秋には「医薬部外品」の承認を目指している。歯磨きのほか、3万5000円ほどのロ内細菌を検査するキットも売り込む予定。中国でも歯磨き粉の年内販売を視野に入れている。
歯周病に関連する微生物を減らす作用を持つ物質を探し出した
LSKBは「疾患名」をデータベースに入力すると、関与する遺伝子を表示して、創薬候補となる化合物を数分で探し出すことができる。このほど微生物やウイルスに作用する化合物も探せる機能を追加した。
同ソフトは製薬企業や研究者向けに1社1000万円程度で、現在は6事業者に販売している。今後は自社でも歯磨き粉のような独自製品の開発に役立てる。川原社長は「創薬探索ソフトはたんぱく質を標的にしたものが多く、微生物やウイルスに作用する化合
物を探索できるのは珍しい。市場ニーズがあるとみている」と話す。
ワールドフュージョンは1996年設立。海外のバイオ情報関連のソフトウエア販売を手掛けるほか、自社ブランドの創薬データベースを開発している。
ほかに微生物解析の受託サービスとして化粧品などの開発メーカーや研究機関向けに、肌フローラ(菌の集まり)解析サービス「sーKINプ口」を提供。同事業の年間売上高は約5000万円で、50以上の大学や企業と取引実績を持つ。