歯磨きデータ集め商品開発
2020年09月19日
ライオン、形状設計に生かす
ライオンは新商品の開発に生かすため、歯磨き時のデータ収集を本格化する。大人よりも歯磨きの「癖」が強く出る子どものデータを活用する。子ども用の歯ブラシにセンサーを取り付けた新商品でデータを収集する。歯磨き時の癖から、磨き残しが多い場所や、きれいに磨けるブラシ形状が分析できる。今後数年のうちにデータを活用した歯ブラシの商品化を目指す。このほど発売した「クリニカKidsはみがきのおけいこ」からデータを収集する。子ども用の歯ブラシに加速度センサーを取り付け、ブラシの位置や角度、速度から適切に磨けているかを読み取る。スマートフォンのアプリと連動し、磨き足りない歯の位置を確認する。センサーからのデータはライオンが収集し分析する。大人と比べ子供の歯磨きの仕方は不規則で、これまでデータを集められなかった。
子どもの歯磨きの特徴が、磨き残しがない歯ブラシの開発に有効なデータになると見込む。
例えば、奥歯に手が届きにくい傾向があれば、形状を変えて奥まで磨きやすくするな
ど、新商品に反映する。
ライオンは歯ブラシの開発にデータを活用する取り組みを進めている。2019年1月に「データサイエンス室」を新設した。研究開発に関するデータの一元管理を進めている。これまで研究者の力量に頼る部分が大きかったが、データを開発に活用する。
また、今年からNTTデータと米データロボットが提供する人工知能(AI)支援サービスを導入し、AIを用いた歯ブラシの開発に乗り出した。歯ブラシは単純な構造に見えるが、材質や形状など様々な要素が絡み合い、設計に時間がかかる。コンセプトに合った設計をAIが提示し、開発期間を短縮する。
こうした動きは歯ブラシの付加価値を高め価格競争から脱する目的がある。ライオンが19年に発売した「クリニカアドバンテージNEXT STAGE ハブラシ」は歯を傷つけるのを防ぐ高機能品。歯ブラシの柄の部分にアラームを付け磨く力が強すぎると「カチッ」という音が出る設計とした。アイデアを生み出すのは研究者だが、データによる開発の効率化で、研究者がより付加価値を出しやすい仕事に専念できるとみる。実際に歯ブラシや歯磨き粉、洗口液などのオーラルケアの国内市場は高付加価値商品が増えたことから成長が続いている。
富士経済(東京・中央)によると2020年の市場は前年比2%増の1921億円と予測されている。
歯ブラシは昔から変わっていないように見えても、細かく見れば進化している。
磨き残しゼロに向けて、データをヒントに新たな商品を生み出す。