奥歯のかみしめ意外な影響
2020年09月19日
元気のココロ
既に奥歯を何本か失っているが、義歯を入れる決心がつかないーー。こう相談される
ことがある。残っている歯で注意しながら食べているという。失った歯が大臼歯であっても、小臼歯が残っていればあまり支障がないかもしれない。しかし、できれば何らか
の方法で奥歯の治療をしておいた方がよいと思う。奥歯の役割には、食物をかみ潰し、消化しやすくすることである。もうひとつの大きな役割は、かみ合わせを安定させることであり、意外と知られていない。
日常生活の中で、知らず知らずのうちに、かみしめが生じる。キッチンで野菜を切るなどの細かい作業や、運転している時でも軽い緊張があると、上下の歯を接触させてしまう。スマートフォンの操作やパソコン作業でもかみしめる傾向となってしまう。
昨今、健康志向の高まりとともに、スポーツや筋トレにいそしむ人が増えている。瞬発力や非常に大きな力が必要となる瞬間には強いかみしめが生じる。無意識のうちに歯を強くかみしめることで、発する筋力がアップすると言われており、そのかむ力は体重以上になることもある。ホームランを数多く打っていたあるプロ野球選手が、引退前には、奥歯がボロボロになっていたという話を聞いたことがあるかもしれない。また、瞬発力を出す直前に、蹴るや走るなどの動的な動きに移る前、ゴルフなどでは構えるという静的な動きの時にキュッと歯をかみしめると、姿勢が安定し、その後のパフォーマンスに好影響をもたらすのを感じた方もおられると思う。
アスリートでなくても、ギュッとかみしめることは、意外とあるものである。長い年月でみると、かみしめは歯に意外とダメージがある。奥歯の役割の一つにかみ合わせの安定がある。奥歯が安定していると、前歯の寿命も延びる。
体力があって健康な時には意識しないと思うが、時には歯の健康に少し気にかけるといいだろう。