唾液の力傷の治り早く
2020年02月10日
唾液の不思議な力
唾液の役割を考えたことがあるだろうか。何か食べたときに出てくるぐらいのものとして、あまり意識しないかも
しれない。よだれが垂れて困ったり、足りなくなって口の中がネバネバしたりと、時に厄介に感じるかもしれない。実は唾液には身体を支える重要な役割があり、魔法のような液体といえる。
唾液の作用として重要なものは、食事の際に口の中を潤し食物を柔らかくさせ、岨噌したり飲み込みやすくしたり
する潤滑作用だろう。適度な潤いは、しゃべる時の発音のしやすさにも役立っている。
他にはむし歯を予防する役割もある。
口の中が酸性になるとむし歯になりやすくなるが、唾液が中和する。
溶け出したカルシウムを歯に戻す「再石灰化」の機能もある。
口腔内は粘膜で構成されているが、その他の皮膚に比べると柔らかく乾燥に弱い。
皮膚よりも弱い存在だが、一方で傷ついても治りが早いのが特徴だ。
口の中が傷ついてもすぐに治るのを、経験を通して実感している人も多いと思う。なぜだろう。これも唾液のおかげだ。口の中の汚れを洗い流す自浄作用や抗菌作用に加えて、粘液成分のムチンが粘膜の修復作用を進める。最近では、ヒスタチンと呼ばれる唾液中のタンパク質が、血管の新生、細胞同士の接着などに影響し、傷の再生を促進することが解明されている。
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