パラジュウム再び最高値
2020年02月28日
中国排ガス規制で不足感 車触媒用
ガソリン車の触媒に使うパラジウムの国際価格が再び最高値を更新し始めた。新型肺炎の感染拡大による企業活動の停滞や、新車販売の不振で1月下旬に下落した後、もみ合う展開になっていた。7月に始まる中国の排ガス規制強化に向け、需要が増えるとの思惑が相場を押し上げている。
パラジウムの現物指標となるスポット(随時契約)価格は21日時点で1トロイオンス2700ドル前後。春節(旧正月)入りを控えた中国勢の購入増で急騰した1月20日の高値2500ドルを大きく上回った。新型肺炎の感染拡大で自動車産業の集積地である湖北省武漢では企業活動が停止。相場は上昇を止め、方向感を探る動きになっていた。今回の上昇のきっかけは中国の排ガス規制を前にした品不足があらためて意識されたことだ。同国では、7月から自動車の排ガス基準を厳しくする新規制「国6」を全国で実施する。2019年7月には主要都市で先行して実施しており、市場では織り込み済みとの見方が多い。規制への対応
で19年のパラジウム消費は前例のないほどの急拡大を見せた。
英精錬大手、ジヨンソン・マッセイ(JM)の統計では、中国の19年の自動車向けパラジウム需要は82.7トンと前年比で28%増と急拡大。多くの現地メーカーが規制開始前に技術研究に回す時間が限られ、使用量の増加で対応したためだ。価格急騰と調達難で、メーカーは使用量を減らす対応に乗り出したが、新型肺炎による混乱が長引けば開発が進まず、搭載量の
増強で対応を迫られる可能性が出てきた。中国需要の底堅さを裏付けるのが、窒素酸化物(Nox)を除去するのに使うロジウム価格だ。中国の新規制では、とりわけNoxの基準値が厳格化されている。現物需給を反映するスポット価格は、感染が拡大した1月末も上昇を続け1トロイオンス1万2690ドル前後と最高値を更新している。「肺炎があっても需要はなお強いということの証左」(商社)だ。ただ、パラジウム価格の急上昇が長続きするかは不透明だ。パラジウムなど貴金属は空輸で輸送することが多いが、北米や欧州から中国向けの空輸便は大幅に減便している。「通行規制などで中国国内の輸送が困難で荷動きが重い」(触媒メーカー)との声もあり、必ずしも中国の需要が完全に回復したとはいえないようだ。
自動車の販売も振るわない。中国汽車工業協会によると1月の中国の新車販売は前年同月比で18%減。19カ月連続で前年
を下回る。1月の数字は新型肺炎の影響が大きくは響いていないもようで2月以降にさらなる落ち込みが想定されている。
20年のパラジウムの国際需給は9年連続の供給不足が見込まれる。
ただ、最大需要国の中国で新型肺炎による生産活動の
停止や規制対応の遅れが出れば需要の減少圧力になる。jMの藤田幹生シニアマーケットアナリストは「自動車の売れ
行きや規制対応など20年は需要動向がことさらに読みにくい一年」と話す。
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