「絶望的」歯並びの矯正へ準備
2020年03月17日
歯磨き妻と二人がかり
唇が裂ける先天性の病気「口唇裂こうしんれつ」で生まれた第四子の三男が2歳半となった。生後二カ月半で受けた上唇の手術痕も目立たなくなり、身長87センチ、体重11.2キ口と体も大きくなっている。子育て中も病気を意識することはない。ある場面を除いては…「ギャーーーッ」いわゆる「ギャン泣き」をされるのが歯磨き。中学一年の長女(13)と小学四年の長男(10)、二年の次男(8)もこの頃は嫌がって大暴れしていたので想定内だった。でも、固く結んだ口をこじ開けると「絶望的」な歯並び。前歯一本は斜めに曲がって、隣の歯は内側に落ち込んで生えている。病気だと再認識させられる。口唇裂や、口の中の上部が裂ける「口蓋裂」の問題の一つが歯並びの悪さ。ブラシが届きにくい場所もあり、医師から虫歯に気を付けるよう注意されている。五歳ごろから歯の矯正が始まる。虫歯は大敵だ。三男が気乗りしない時じは手足を押さえ、妻(39)とニ人がかりで歯磨きをする。
ただ歯を除けば、心身共に健やか。一人で歩けるまでに成長した。政治部の記者として働く私(39)は2018年10月から半年間、沖縄県の琉球新報社との記者交流で単身赴任。この間に、三男が一歩を踏み出した。歴史的瞬間に立ち会えなかったのが心残りでならない。
三男が生まれた後、人生初の育児休業を取得した。家事・育児の大変さを心底感じたものの、今は平日夜に散発的に皿洗いをする程度。それを挽回すべく、休日はきょうだいの習い事の送迎などの合間を縫つて買い物をし、土日の食事はほぼ記者が作る。週明けの妻の負担が減ればと、作り置きすることもある。口蓋裂の子は、のどの弁がうまく働かず、発音障害が起きやすい。発声時に鼻に空気が抜け、フガフガと聞こえることもある。三男も走るバス
を見て「パフ」と呼び、発音障害を疑ったことも。また、きょうだいが記者を「お父さん」と呼ぶのに、三男はなぜか「パーさん」とか「ポーさん」と呼ぶ。でも三男は幸い口唇裂だけ。割れ目も手術でふさいだので大丈夫そう。今では「バス」と正しく発音できる。それどころか、年の離れた弟と
あってきょうだいから「王子様」扱い。一緒に遊ぶうちどんどん口達者になっている。三男が生まれる前、実は「口唇・口蓋裂の子を愛せるだろうか」と尻込みしていた。不安は初対面の瞬間に吹き飛び、ずっとこのままでも
構わないとさえ思うほどだった。手術で唇はつながったが、鼻が少しゆがんでいたり、上唇から鼻に赤い線が残っていたりする。でも全く気にならない。かわいくて仕方がない。
一方、主治医からは「もっときれいにしましょう」と提案された。昨年10月、二度目の手術を受けることになった。
第四子の三男が「口唇裂」で生まれたのを機に、パパである記者が2017年7月、育児休業を取得。家事・育児に励む様子を18年1月から生活面で連載しました。三男の成長ぶりと見守る家族を二回にわたって紹介します。
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