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ゲノム医療歯周病・アトピーに
2020年10月20日
神戸大学発のスタートアップ、バイオパレット(神戸市)は独自のゲノム編集技術を生かして医療分野に参入する。まず歯周病とアトピー性皮膚炎の治療薬の開発に乗り出す。大手ベンチャーキャピタルのジャフコから10億円の開発資金を調達した。開発拠点と研究員を拡充し、最短で2026年の実用化を目指す。神戸大や地元の神戸市が目指す地域の先端医療産業の育成に寄与するかが注目される。
バイオパレットは、神戸大の西田敬二教授が開発したゲノム編集技術の事業化のため17年に設立。
一般的なゲノム編集技術がDNAの鎖の特定部分を切り貼りして遺伝子を改変するのに対し、西田教授の技術はDNAを切断せずに1つの塩基を置き換える。安全性が高いとされ、精緻なゲノム編集が可能になると期待されている。
独自のゲノム編集技術の活用方法を検討していく中で、ヒトの体内にある細菌の集団(マイクロバイオーム)を適切なバランスに整えることで疾病の進行を食い止めたり回復させたりする治療法に着目した。
例えばターゲットの一つにする歯周病の場合、口腔内の細菌集団のバランスの悪化と疾病との関連につて研究が進んでいる。
バイオパレットは歯周病の原因とされる幾つかの悪玉菌を取り上げ、ゲノム編集で悪い働きを弱めるように改変する。そして改変した菌を投与して悪玉菌と置き換え、細菌集団のバランスを整えることで歯周病の治療につなげることを目指す。
アトピーにつても、歯周病と同じように悪玉菌に加えて、細菌集団に良い働きをする善玉菌の候補を見つけ出す。
善玉菌の場合はゲノム編集によって良い働きをする力を強めるイメージだ。
同社によると、DNAを切り貼りするゲノム編集技術だと細菌へのダメージが大きく、ゲノム編集した細菌を治療に生かす試みは難しいという。
開発研究資金を確保するため今月中旬にジャフコに対して第三者割当増資を実施し、10億円を調達した。バイオパレット
は17~18年にかけて米国系の3つのベンチャーキャピタルから約5億5千万を調達しており、資金調達の総額は約15億5千万円になった。増資後も西田教授ら創業関係者のグループが主要株主の地位を維持する。
バイオパレットは研究開発の人員(現在9人)を増強し、今後1年で14~17人へと増やす予定。早ければ1年後に動物実験を始め、臨床試験を経て早期の実用化を目指す。治療薬の製造販売など外部のパートナー企業に委託することを想定している。ゲノム編集をして微生物を治療に生かす試み自体が珍しく、実用化に際してはどのような規制などが必要になる。またマイクロバイオームによる治療薬も比較的新しい分野なだけに未知数の部分もある。バイオパレットは関係当局のほか、外部の研究機関や企業などとも調整や連携をしながら開発を進めていく。
神戸大は医療・バイオ分野で大学発スタートアップの育成に力を入れている。地元の神戸市地域経済の新たな成長の柱として医療産業の育成に取り組み、ポートアイランドに先端医療技術の研究開発拠点「医療産業都市」を整備している。
バイオパレットも同都市にお拠点を構えている。
同社は10月に同じ医療産業都市内に神戸市などが整備するスタートアップ向けの研究開発施設「クリエイティブラボ神戸」に移転・入居。拠点スペースは従来の2.5倍に広げ、同都市のインフラを活用しながら事業拡大を目指す。
歯周病やアトピー性皮膚炎は完全な治療方法が確立されておらず、仮に有効な治療薬が実用化されれば大きな注目を集める。バイオパレットの研究開発の動向は神戸の医療産業の潜在力を見極める上での一つの試金石にもなる。